早期教育を虐待にしないために親が心がけたいこと

様々な育児書が世の中にはあふれていますよね。
育児書といっても、子供についての広く深い知見と経験から書かれた本だけでなく、教育法などについてのセールスを絡めた本、中にはお子さんを有名大学に入れたというご自身の子育てについての記録書のようなものもあります。

内容が薄いと感じる本でもベストセラーになっているのはなぜだろうと思うことがあるのですが、人は身近でわかりやすかったり、自分を肯定してくれる、それでいいよと言ってくれるような耳ざわりの良いものを読んで安心したいという気持ち、一方で、自分が知らないエキセントリックな教育法に打開策を見出したいというような需要もあり、そのような本の方が売れるのかもしれません。

どんな良いことを言っていても、売れなくては、広く読まれなくては仕方がないので、もっと知られるといいなと思っている本がこちらです。

私は迷ったときにたびたび手にとって、バイブルのように読み返しています。

著者の佐々木正美さんは30年以上児童精神科医として子どもの臨床に携わってこられ、さらに保育園や幼稚園、学校、児童相談所、養護施設、家庭裁判所などさまざまな場所で数多くの子どもや親とかかわってこられた方です。
内容には、深い知見と広い経験に裏づけされた重みがあります。

付箋や折り目だらけです。何度も線が引かれたり、マーカーでしるしをつけてあるのは、自分が特に反省しなくてはいけない部分についての、戒めの表れですね(笑)。

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決して親を一方的に批判したり、何かのやり方を押し付けるような本ではありませんが、甘くもありません。しかし一貫しているのは、子どもたちへの深い愛情です。

先生は乳幼児期について「やり直しがむずかしい人間の基礎をつくる大事な時期」であり、そして、この時期に大事なことは「子どもの要求や期待にできるだけ十分にこたえてあげること」一言で言えばただそれだけだとおっしゃっています。

早期教育についても触れられています。

「家庭内で夫婦が相互依存できない人は、その分だけ別のものに依存することになる。自然な人間関係が希薄になった分だけ、病的な依存が現代人に多くなりました。(略)子どもの成長とか発達とか、学力とか偏差値とか、稽古事やスポーツなどの技能とか、そういうものが、自分の思い通りに育っていってくれるようにみえることに依存するのです。(略)子どもを自分の思い通りにすることで、あるいは、結果としてそうなったことに依存して安心するという親が多くなったと思います。(略)早期教育も、なんとか自分の思いどおりに子どもをひきまわそうとする、親の別の虐待の例であることが多いと思います。(略)現代の親は、子どもを所有物にしすぎてしまっているのです。子どもに別の人格を認めてあげられるほど、親の方が成熟や自立をしていないのですね」
(「子どもへのまなざし」佐々木正美(福音館書店)より一部抜粋引用)

先生は、そういう子どもが、どのように育っていくか、様々な例をご存知なので、意見も厳しく、深く、納得できます。

「ありのままのきみでいいんだよ」と常に子どもを肯定する。そのことが大事だとわかっていても、ついつい、期待してしまう。難しいですよね。

「親が望んでいるような子どもになって欲しいと期待するのではなく、子どもが望んでいるような愛し方を出来るような親になること」そして、その「子どもが望んでいるような愛し方」というのは、「お母さんが、赤ちゃんと一緒にいることを幸せだと感じていること」ということが例として挙げられています。

シンプルなのに、難しく感じることも多いです。なんで難しく感じてしまうのだろうということを考えると、自分自身の弱さにも思いあたりはっとさせられます。

それでも、やはり期待してしまう。親だから仕方がない部分でもありますよね。でもそんな自分だからこそ、道を正してくれる指針として最適だと思っています。この通りには出来ないけれど、いつも頭の片隅においておくだけでも、私にとっては育児がだいぶ違っていると思います。

せめて押し付けではなく、遊びの中からいつのまにか学んでいるといいなと、虫のいいことを考えて遊んできました。結局は遠回りに押し付けているのかもしれませんが、期待をできるだけしないで、自分も楽しみたいと思っています。